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外部の第三者の保証を取り付ける信用補完も盛んに行われています。
10億円の返済金というキャッシュフローを生む契約になってはいても借り手の債務不履行で場合によっては3億円の返済金しか生まない対象資産がある場合を考えましょう。
このキャッシュフローをそのままパススルーする証券を発行するなら当然そのパススルー証券は信用リスクを抱えます。
そこで外部の第三者から「対象資産が3億円のキャッシュフローしか生み出さなかったら発行証券の支払い金として7億円を補填する」という保証を取り付けます。
そして支払い金にその保証を付けた証券を発行します。
すると対象資産のキャッシュフローとこの保証からの補填額を合わせてこの証券は確実に10億円の支払いを行えることになります。
このように外部の第三者からの信用補完によって発行する証券の信用リスクを軽減することができます。
もちろんこのような第三者による信用補完はただではできません。
保証を提供することでリスクを負うわけですから信用を補完する側はその対価を求め証券の発行者は保証料を支払うことになります(証券の形をとりませんがこれもリスクの取引であることに注目してください)。
発行者にとってはコストとなる外部からの信用補完ですがこの補完によって発行証券の信用リスクが軽減されて高い格付けが得られるなら発行証券への需要は増加し一層高値での売却が可能になります。
この売却価値の増加分が信用補完にかかる費用を上回るなら信用補完を行う利益があるのです。
ここで外部の第三者による信用補完は信用リスクを補完する第三者に完全には移転していないことに注意しなければなりません。
たとえ契約上信用補完をすることになっていても例えばその信用補完するはずの第三者が倒産したならば実質上信用補完の契約は無効になってしまい信用リスクも補完されないことになってしまいます。
このため外部からの信用補完では信用リスクの目安として信用を補完する第三者の格付けが重要になります。
格付けの高い第三者からの信用補完を受けるなら発行証券の格付けも高くなりますが格付けの低い第三者からの信用補完ではそれを受けた発行証券の格付けも低いものとなってしまうのです。
GNMAFNMAFHLMCのような政府系金融機関による公的MBSでは発行証券の支払いに明示的もしくは暗黙に政府の信用保証が付けられるため明示的な信用補完のストラクチャーはあまり重要ではありません。
しかしながらこれら以外の資産の証券化では政府の保証はありません。
その一方投資家は信用リスクに関して敏感で特に債券型の証券化金融商品を高い価格で売却するためには高い格付けの取得が不可欠です。
そこで私的MBSやCMOさらには一般の資産の証券化であるABSでは優先・劣後構造や第三者の信用保証等の明示的な信用補完のストラクチャーを利用して信用リスクをコントロールし高い格付けを持つ証券を作り出すことが非常に重要なこととなります。
ここまで住宅ローンの証券化を中心に様々なリスクが様々にコントロールされ取引される様子を紹介しました。
「適切な仕組みを利用すればどんなリスクでもある程度はコントロールできる」。
そこからはこんなメッセージが伝わってきます。
住宅ローンでできるなら他の資産についても同様のことができておかしくありません。
実際住宅ローンの証券化の手法を応用することで様々な資産の証券化か行われその規模と範囲は拡大し続けています。
これがいわゆる資産の証券化です。
対象資産が抱えるリスクの特性に応じて若干の工夫が必要になることや公的MBSとは異なり信用リスクに関する政府の保証がないこと等から高い格付けを持つ第三者の信用保証や優先・劣後ストラクチャー等信用補完のためのより複雑な仕組みが必要になります。
自動車ローンの返済金をプールすることで対象資産を構成する第一段階倒産隔離を行う第二段階は住宅ローンの証券化の場合と同様です。
ここで第三段階のストラクチャリングにおける信用リスクのコントロールが重要になります。
通常このリスク・コントロールのために前述の優先・劣後ストラクチャーや外部の保証による信用補完がなされます。
さらにあらかじめ一定の資金を銀行口座に積み立てて支払いに備えるリザーブ・アカウントを対象資産の額面以下に抑える超過担保等の補完的な措置がこれらに加えられます。
自動車ローンの証券化は住宅ローンの証券化の自然な応用として1985年に米国の自動車ローン会社GMACによって始められました。
証券化の手法を用いることで自動車ローン会社は資本市場から資金を調達する新たな方法と財務改善の手段を手に入れることになりましたがなかでも質の高い対象資産とすることで自社の格付けよりも高い格付けで証券化金融商品を売却できる点がその魅力となりました。
そしてこのことがさらに他の資産への証券化技術の応用を促したのです。
クレジットカードABSは1987年に公募発行されて以来拡大を続けABS市場全体の約半分のシェアを占める成長を遂げた証券化金融商品です。
クレジットカードを利用するとカード保有者にはカード会社や銀行に使用金額分を支払う債務が生じます。
このようなクレジットカードの使用で生じたカード保有者に対する与信債権をカード会社や銀行が証券化したものがこのクレジットカードABSです。
クレジットカードABSにはその他の証券化金融商品にはない難しさがあります。
誰しも毎月クレジットカードで買い物をする金額が違うようにそのプールである対象資産についても毎日の与信残高が大きく変動してしまうのです。
さらにクレジットカードの与信には明確な満期もありません。
このままではABSの発行は困難です。
そこでこのような問題を回避しABSの発行を可能にするため対象資産のキャッシュフローと発行証券の支払い金との関係を調整する工夫が必要となります。
それがマスタートラストの利用です。
カード会社や銀行から譲渡されたクレジットカードの与信債権を元手にマスタートラストはそのキャッシュフローの一部分だけを発行ABSの支払い金とする証券化を実行します。
こうすれば与信残高の変動がABSの支払いに影響するのを防ぐことができます。
さらに対象資産からのキャッシュフローではなくABSへの支払いに人工的に満期を設定します。
これによって満期の問題も解決できるわけです。
さらにこれに通常の信用補完も加えられます。
カード会社や銀行は同じマスタートラストに対して後から与信債権を追加譲渡できます。
一方マスタートラストも与信債権のプールを原資に複数の証券を追加発行できます。
マスタートラストはあらかじめ対象資産の内容を固定せず発行証券の内容も固定しないという柔軟性を享受しつつ対象資産のキャッシュフローと発行ABSの支払いのギャップを調整する仕組みなのです。
クレジットカードABSを発行するとカードへの与信債権は貸借対照表(バランスシート)の資産項目から取り除かれオフバランス化されます。
BIS規制のもとにある銀行にとってこのことはリスクのある資産項目を膨らませることなく事業だけ拡大できるというバランスシート上のメリットがあることを意味します。
この市場が大発展を遂げた背景にはこのような事情があるのです。
実際クレジットカードABSの主たる発行者にはシティバンクやM社といった銀行が名を連ねています。
リース債権の証券化は1985年米国でコンピューター・リース債権を対象資産に始められました。
その後も様々なリース債権が証券化され米国ではABS市場の3%程度(1996年)のシェアを占めています。
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